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社内でAI推進を誰がやる?答えはITが得意な人ではなく“業務が分かる人”【社長の仕事をAI・DXで軽くする28】

AI推進が進まない会社には、ある共通点があります。
「誰がやるか」を決めずに、ツール選びから入ってしまうこと。
結論から言うと、推進役はITが得意な人ではなく、業務が分かる人が最適です。
AI活用の会議が盛り上がっても、結局誰もAIを触らないという状態になっていませんか?

目次

「社内でAI推進を誰がやる?」が迷子になる本当の理由

社内でAIやDXを進めたいのに、最初の一歩で止まる会社が少なくありません。理由は単純で、技術の問題ではなく推進の設計が曖昧だからです。

社長としては「とにかく遅れたくない」「社員の残業を減らしたい」「採用でも不利になりたくない」と考える一方、現場は現場で忙しく、何かが増える予感に敏感です。ここで、誰が旗を振るかが決まらないと、ツール選定だけが進み、運用が始まらない状態になりがちでしょう。

ITが得意な人に任せるほど、現場が止まることがある

誤解されやすいのですが、AI推進は「システムを触れる人」が中心だと失敗しやすい場面があります。なぜなら、生成AIや業務の自動化は、プログラムよりも先に業務のルールが必要だからです。

たとえば、見積書ひとつ取っても、価格の決め方、例外処理、社内承認の順番、顧客ごとの言い回し、禁句、添付ファイルの扱いが会社ごとに違います。業務が分からないと、テンプレもチェック項目も作れません。結果として、現場はこう感じます。

「それ、うちのやり方と違う」
「例外が多すぎて使えない」
「結局、二重入力が増えただけ」

あなたの会社でも、過去に似た経験はありませんか。

会社あるある:導入会議だけ盛り上がり、翌月から誰も触らない

よくある光景です。会議では「AIで効率化だ」と盛り上がるのに、翌月には共有フォルダに「試験導入」の資料だけが残る。理由は反対ではなく、現場が忙しすぎて、試す余裕がないからかも知れません。

さらに悪いのは、現場が一度でも「使えない」と感じると、次の提案に協力しなくなることです。ここで必要なのは、現場の痛みを分かっていて、現場の言葉で翻訳できる推進役です。


答え:推進役は“業務が分かる人”。業務が分からないとテンプレもルールも作れない

結論を明確にします。社内AI推進の主役は、ITが得意な人ではありません。業務が分かる人です。さらに言えば、現場に信頼がある人が最強です。

「推進役って、経営企画ですか?総務ですか?ITですか?」と迷うかも知れません。答えは部署名ではなく、役割の条件で決めるべきでしょう。

生成AIは「入力の型」が9割。型は業務からしか生まれない

生成AIは魔法ではありません。業務で効くのは、いつも同じです。

・何を入力すると
・何が出力され
・どこまでがAIで、どこからが人の責任か

この「型」があると、現場は迷わず使えます。逆に型がないと、毎回プロンプトを考えることになり、使うほど疲れます。

型を作るには、業務の全体像だけでなく、例外と判断基準を知っている必要があります。だから業務が分かる人が必要なのです。

国の公的文書でも、DXは「単にデジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、企業経営の変革そのもの」と整理されています(経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」)。

推進役は、現場に信頼がある人が最強な理由

AI推進は、社内の協力がないと成立しません。なぜなら、入力するのも、運用するのも、改善点を見つけるのも現場だからです。

現場が「この人が言うなら、いったんやってみよう」と思えるかどうか。ここが分岐点です。現場から見ると、推進は追加業務に見えます。つまり、信頼がないと「また仕事が増えるだけ」と感じて止まるのです。

推進役は、完璧なITスキルよりも、次の力が求められます。

・現場の作業を分解して言語化する力
・例外処理を拾って、ルールに落とす力
・反発を受け止めつつ、着地点を作る力

あなたの会社で「この人が言うなら現場が動く」と思い浮かぶ人はいますか。そこがスタート地点でしょう。

兼務でも回る「業務オーナー型」推進という現実解

年商1億円以上の会社でも、専任のDX部署をいきなり作るのは現実的ではない場合が多いです。だからこそ、最初は兼務で回す設計が効きます。

おすすめは「業務オーナー型」です。つまり、最初の対象業務を持つ部門のリーダーが推進役になる形です。たとえば、受発注なら営業事務の責任者、請求なら経理、現場報告なら工事責任者。最初の勝ち筋が見えたら、横展開すればよいでしょう。


AI・DX推進部署・人材は必要か:小さく始めて失敗を減らす体制設計

「推進部署を作らないと進みませんか?」という質問が出ます。結論はこうです。

最初から部署が必要とは限りません。
ただし、体制と責任分界は必要です。

部署を作る前に決めるべき3点:目的、範囲、責任分界

社内AI推進が止まる会社は、目的が曖昧です。「AIを使う」が目的になると、現場は動けません。

最低限、次の3点を社長が決めると進みます。

1) 目的:残業を減らす、納期回答を早くする、ミスを減らす など
2) 範囲:まずは受発注、議事録、請求のどれから など
3) 責任分界:AIが出した文章を最終確認するのは誰か

この3点が決まると、推進役は「何を作ればいいか」が見えます。逆に決まらないと、推進役が迷い、結局止まります。

ルール作りが最大の壁。公的調査でも「理解不足」「基準作り」が課題

生成AIが現場で広がらない最大要因は「ルールがない」ことです。IPAの調査レポート「DX動向2025」では、生成AI活用の課題として、効果やリスクの理解不足、そして適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しいことが挙げられています。

だからこそ、推進役に必要なのはITスキルよりも、業務を前提にしたルール作りです。たとえば次のようなルールです。

・社外秘情報を入れてよい範囲
・顧客名、単価、契約条件などの扱い
・生成物の最終確認者
・禁止用途(採用評価、取引判断の単独利用など)

ここを曖昧にすると、社内は怖くて使えません。怖いから、紙に戻ります。会社あるあるでしょう。

IT部門と外部パートナーの正しい使い方

ここでIT担当の出番がなくなるわけではありません。役割が違うのです。

・業務オーナー(推進役):テンプレ、業務ルール、運用、改善
・IT担当:アカウント管理、セキュリティ、既存システム連携、端末整備
・外部パートナー:設計支援、初期実装、教育、伴走、難所の突破

経済産業省の手引きでも、中堅・中小企業は外部の支援機関を適切に活用し、必要な人材を確保することが重要だと整理されています(中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025)。


社長の立ち振る舞いが9割:現場が動く言い方、動かない言い方

社長が「AIやれ」と言うだけでは動きません。一方で、社長が守るべき約束を言語化すると、現場は驚くほど動きます。

「使え」ではなく「減らす」「守る」「増やす」を宣言する

効果が出る社長の言い方はこうです。

・減らす:社内の二重入力、転記、同じ説明の繰り返しを減らす
・守る:AIで増えた分の仕事を増やさない。入力した人が損しないよう守る
・増やす:顧客対応の速さ、提案の質、現場の安全を増やす

ここまで言うと、現場は「やらされ感」ではなく「自分たちのため」と受け取りやすいでしょう。

経済産業省のDXレポートでも、DXは業務の見直しを伴う経営改革であり、現場の抵抗も大きい中で実行が課題になると指摘されています。放置すると「2025年以降、最大12兆円/年の経済損失の可能性」という問題提起もあります(経済産業省 DXレポート概要)。

評価と安心がセット。入力した人が損しない設計

現場が一番怖いのは、「入力が増えるのに、評価は変わらない」状態です。ここを放置すると、協力が止まります。

たとえば、議事録をAIで作るために会議メモを整える。FAQを作るために問い合わせを分類する。どれも最初は手間が増えます。この手間を「改善活動」として評価するのか、少なくとも守るのか。社長が線を引くべきです。

「AI活用に協力した人が、損をする評価はしない」
この一言は、想像以上に効きます。

会社あるある:紙に戻る理由は“反対”ではなく“怖さ”

印刷してハンコを押すのは、好きでやっているわけではありません。怖いからです。データが消えたらどうするのか、誤送信したらどうなるのか、責任は誰が取るのか。怖さが消えない限り、紙は残ります。

だから、AI推進で最初にやるのは「怖さを消すルール」です。推進役が業務を分かっていて、社長が守る約束を出せる会社ほど進むでしょう。


国内のデジタル化成功事例:派手さより、業務の言語化が勝つ

成功事例を見ると、共通点があります。最新技術を入れたから勝ったのではなく、業務の言語化と運用設計で勝っています。

FAX受発注から脱却し、完全ペーパーレスと大幅な工数削減

受発注は、紙文化が強い領域です。中小企業庁の整理でも、FAXや電話での受発注が一定数残る一方、電子受発注への対応が進みつつあり、2021年時点で受注側の48.5%が電子受発注に対応とされています(中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」)。

たとえば、富士フイルムビジネスイノベーションの導入事例として、石川中央食品株式会社は受発注業務を電子化し、完全ペーパーレス化、作業時間3,000時間/月、コスト600万円/月の削減を掲げています。数字が大きいのは、受発注が「伝達コスト」の塊だからです。

あなたの会社でも、受注FAXを見てExcelに転記し、社内に回して、確認の電話が入る流れはありませんか。ここが崩れると、残業が減りやすいでしょう。

出典:富士フイルムビジネスイノベーション「石川中央食品株式会社 様 導入事例」
https://www.fujifilm.com/fb/solution/jirei/ishikawachuo-s.html

バックオフィスを月80時間短縮:情報の集約が効く

AIだけでなく、DXの基本は「情報を一か所に集める」ことです。freeeの導入事例では、ツールが分散し手作業のデータ移動が必要だった状態から、システムへの情報集約を進め、バックオフィス業務の負担削減につなげた例があります。給与計算のリードタイム短縮など、具体的な効果が示されています。

会社あるあるとして、同じ数字が「営業のExcel」「経理のExcel」「社長のExcel」でズレる現象があります。まずは集約しないと、AIは学習以前に前提が崩れます。

出典:freee 導入事例(social interior)
https://www.freee.co.jp/cases/socialinterior/

国のDX優良事例(DXセレクション)が示す共通点

「結局、どんな会社がDXに成功しているのか」を見るなら、経済産業省のDXセレクションが参考になります。2025年も、DXで成果を残した中堅・中小企業が選定され、手引きとしてポイントと事例が公開されています。

その手引きでは、DXを「顧客視点で新たな価値を創出するために、ビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むこと」と整理し、ツール導入そのものが目的ではないと強調しています。さらに、経営者が中長期視点で戦略を組み立て、人材の確保・育成と外部活用を進める必要があると述べています(中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025)。

出典:経済産業省「DXセレクション2025を選定しました」
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250324002/20250324002.html

出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(PDF)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chukenchushotebiki/dx-chukenchushotebiki_2025.pdf


つまずきポイントと突破口:人が増えない時代のAI推進は「伝達コスト」から攻める

中小企業の現実は、人が増えません。むしろ減ります。中小企業白書でも、構造的な人手不足が強まり、人手不足に対応する方法の一つとしてデジタル投資による効率化が位置づけられています(2025年版 中小企業白書 第5節 デジタル化・DX)。

100人以下は「予定なし」が約8割という現実。先送りの損失

IPAの「DX動向2025」では、日本の100人以下の企業で、生成AIについて「関心はあるがまだ特に予定はない」「今後も取組む予定はない」の合計が8割近いと示されています。つまり、多くの会社が様子見です。

ここで差がつくのは、先端技術の採用ではなく、社内の伝達コストを減らす地味な改善でしょう。様子見が悪いわけではありません。ただ、取引先の電子化が進むほど、「対応できない会社」になりかねません。

出典:IPA「DX動向2025(PDF)」
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf

受発注・請求・議事録が効く理由:同じことを何度も書く仕事の削減

AIの効果が出やすいのは、判断の芯がある程度決まっていて、文章や転記が多い業務です。具体的には次の領域です。

・議事録、報告書、日報の下書きと整形
・問い合わせ返信のドラフト、FAQのたたき台
・見積・提案の文章部品の再利用
・請求、入金、督促の文面テンプレ化

なぜ効くかというと、これらは「同じ説明を何度も書く」「誰かに確認する」「探す」作業が多いからです。ここは残業の温床になりやすいでしょう。

ここで、推進役の腕の見せどころが「テンプレの設計」です。業務が分かる人が、現場で使える言葉に落としていけば、AIは使い物になります。逆に業務が分からないと、立派なテンプレが現場で嫌われます。

社長が今日決められるチェックリスト:推進役、対象業務、最初の成果

最後に、社長が決めるべきことを短くまとめます。ここが腹落ちすると、推進が前に進みます。

・推進役:業務が分かり、現場から信頼される人を指名する
・対象業務:伝達コストが高い業務を1つに絞る(受発注、請求、議事録など)
・最初の成果:時間削減、ミス削減、検索性向上など「現場が得する指標」にする
・守る約束:入力した人が損しない。AIの責任分界を明確にする
・支援:ITは基盤、外部は伴走。推進役は業務設計に集中させる

ここまで決めれば、推進役は動けます。逆に言うと、ここが決まらないと誰でも動けません。あなたは、推進役に「丸投げ」していませんか。


まとめ:AI推進は「人選」で決まる。推進役を立てれば会社は動く

社内でAI推進を誰がやるか。答えは、ITが得意な人ではなく業務が分かる人です。業務が分からないと、テンプレもルールも作れません。推進役は、現場に信頼がある人が最強です。

そして社長の役割は、ツール選びではありません。目的、範囲、責任分界、守る約束を決めることです。社長がそこまで言い切れた会社は、現場が動きます。動き出せば、AIは道具になります。

「うちの推進役は、誰が最適だろう」
「最初に削るべき伝達コストは、どの業務だろう」

この2つが言語化できた瞬間、会社は変わり始めるでしょう。


参考資料・出典

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